承認、臨床開発ステージの主要な分子標的抗がん剤(2009年9月26日時点)をアップしました。

1980年代のヒトがん遺伝子やがん抑制遺伝子の発見により、がんが遺伝子疾患であることが証明され、それ以来、これらの遺伝子の産物を標的とした抗がん剤の創薬が活発に進められてきました。特に過去10年間、がん遺伝子産物などをターゲットとする分子標的抗がん剤の開発は大きな成功を収め、現在世界で20近くのがん分子標的治療薬が承認されています。今や分子標的薬剤のファミリーは、抗がん剤の世界において、DNA作用薬、チューブリン作用薬、代謝拮抗剤などのクラシカルな化学療法剤ファミリーを凌ぐまでに成長しました。ここでは、これまでに承認された、また臨床開発ステージにある主要な分子標的抗がん剤の開発状況に関する情報を提供します。

表1 承認された主要な分子標的抗がん剤
表2 臨床開発ステージの主要な低分子性分子標的抗がん剤とその標的分子

表1には、日米で承認されている主要な分子標的抗がん剤をまとめました(2009年9月26日時点)。本表にある17剤の内訳は、12剤が低分子医薬品、5剤が抗体医薬品です。それらの標的分子としては、TrastuzumabとLapatinibの標的であるHer2、またGefitinib、Erlotinib、Cetuximab、PanitumumabおよびLapatinibの標的であるEpidermal growth factor receptor(EGFR)、さらにはImatinibの標的であるBcr-Ablといったチロシンキナーゼ活性を有するがん遺伝子産物が多くを占めています。

最近では、 Trastuzumabのような単一標的に対して作用する、いわゆる“ピュアー”な作用をもつ薬剤に続いて、多種のプロテインキナーゼに対して阻害作用をもつSorafenibやSunitinibが登場し、それらの優れた臨床成績から、複数標的に対する“マルチターゲット”作用薬の開発に期待がかけられています。また、Imatinib耐性の慢性骨髄性白血病に有効な第二世代のBcr-Ablキナーゼ阻害剤であるDasatinibとNilotinib も承認されています。さらに最近では、セリン・スレオニンキナーゼ活性をもつmTORの阻害剤であるTemsirolimus、Everolimusが承認されています。上述の13剤はいずれもプロテインキナーゼを標的とし、うち11剤はがん遺伝子産物がもつチロシンキナーゼを主標的としています。

なお上記のキナーゼ阻害剤以外の薬剤としては、CD20に対するモノクローナル抗体のRituximab、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)に対するモノクローナル抗体のBevacizumab、プロテアソーム阻害剤であるBortezomib、ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)阻害剤であるVorinostatの4剤が承認されています。

表2には、国内外で臨床開発ステージにある主要な低分子性分子標的抗がん剤とその標的分子をまとめました(2009年9月26日時点)。本表には、抗体を除く低分子薬剤が約 170化合物リストアップされています。またそれらの標的として、36種(ファミリー)が分類されています。分子標的抗がん剤の創薬標的として、プロテインキナーゼは極めてポピュラーな標的であり、その阻害剤は臨床開発中の分子標的抗がん剤全体の3分の2近くを占めていると思われます。

プロテインキナーゼ以外の標的としては、承認医薬品の実績があるHDAC、プロテアソームの他、ファルネシルトランスフェラーゼ、テロメラーゼ、Heat shock protein(HSP)90、キネシン、Bcl-2等々を標的とする阻害剤の臨床開発が進んでいます。また最近では、新規作用メカニズムを有する薬剤として、HedgehogやNotchシグナル伝達経路の阻害剤、スプライシングファクターSF3bの阻害剤、さらにはタンパク質分解の新規因子Nedd 8活性化酵素の阻害剤等が臨床試験入りしており、今後の臨床試験の結果に興味が持たれます。